2000年水煙秀句高橋信之評
◆1月号◆ 手袋に手を入れ五指を広げみる/高橋正子一読して作者の個性を読み取ることが出来ます。言葉遣いの平 明さも、この個性に力強さを与え、作者の主体性には何の揺る ぎもありません。とても快い俳句です。
◆2月号◆ 暖炉の火の揺らぎの満ちて子の寝顔/日野正人この句は、五七五のリズムをうまく使って一日の終りの安らぎ を表現しています。上五が六音の字余りとなって緊張があり、 中七の「満ちて」に続く下五の「寝顔」という安らぎのイメー ジによい効果を与えています。はじめに緊張があって、終わり を安定させているのです。一句の終りを体言で切ったのも成功 しました。
◆3月号◆ 冬帽の赤青黄色鬼ごっこ/堀佐夜子 歌いたくなるようなリズムがありますね。子どもの心に戻った 喜びに読者もともに喜ぶことができ、嬉しくなります。芭蕉の 「俳諧は三尺の童にさせよ」といった言葉を思いだしました。
◆4月号◆ マスクより笑い零れて膨らむ話/森 隆博 こころの自由があって、在り来たりの句にはない良さがありま す。読み手に快い開放感を与えてくれます。
◆5月号◆ 影濃くて春の動きの鬼ごっこ/吉田 晃 芯がしっかりして力のある句。日々の生活の中で俳句を作る、 という持続する行為が精神を強いものにさせているのです。
◆6月号◆ 穂を持って麦は青さを日に返し/相原弘子 作者の弘子さんは、自然の中心に居て、ひろびろとした世界を うまく捕らえました。作者の位置がはっきりしています。
◆7月号◆ 風青し麦の穂波の青ければ/守山満樹 私の好きな句で、目の付け所が並ではなく、深いところを見て います。
◆8月号◆ 鯉幟上手い具合に山の風/古田けいじ 作者の生活を詠んだものではなく、風景を写生したものですが 、ここで使われた言葉、「上手い具合に」には、作者のはっき りした思いが込められていますので、とても力強い句になりま した。
◆9月号◆ 咲きかけの黄薔薇とアンネフランクと/古田けいじ 「黄薔薇」と「アンネフランク」との取り合わせがいい。作者 の思いが伝わってくる。
◆10月号◆ うまおいが来るパソコンの明るい部屋/吉田 晃 「うまおい」と「パソコン」との取り合わせを「明るい」もの として捉えた。そこがユニークである。
◆11月号◆ 鰯雲見上げるポプラのその上に/霧野萬地郎 とらわれのない広々とした風景は、日本のものであって、また 世界のどこかで見ることの出来るものでもある。
◆12月号◆ 露草の青い空気へ車椅子/堀佐夜子 「車椅子」の生活のすべてを言い尽している。不自由な生活で 感覚が鋭敏になり、物が見えている。